Kosei Asami Essential Voice Training

声という素晴らしい楽器


いざ歌うとき、歌い手としては感情表現に徹したいものです。歌は発声で歌うものではありません。開放された精神とか集中力とか、そういったものが何より歌を素晴らしいものにします。一方で「ひっくり返る」「はずれる」「もたない」等の様々な「かもしれない不安」は、歌をあっけなくダメにします。確かな自信が必要です。

音楽を奏でるあらゆる楽器の中で、声ほど素晴らしい楽器はないと思います。生まれた瞬間から、本能的に奏でられる楽器。成長に伴い、生涯音色も進化します。元々身体の一部なので、携帯性は抜群。時と場所を選ばず、その気にさえなれば、自由に奏でることの出来る素晴らしい楽器、それが声だと思います。一方でその演奏方法は、自分自身が楽器そのものであるだけに、かえって捉えにくく、複雑に思え、事実かなりデリケートな側面があります。

既にプロとして活動しているアーティストの初回レッスンの様子です。クリニックで歌っていただくと、なるほど魅力的な声色と感性に満ち溢れています。アーティスト活動において、個性は最も重要な要素です。またそれと同時に、継続性も大事な要素となってきます。ご自身、現在のパフォーマンスに満足出来ていなかったり、時に疲れやすかったり、ブレスがキツイと感じていたり、様々な課題をお持ちです。クリニックでは、何か歌っていただくことで、それらの課題を整理することが可能です。簡単なアドバイスで、その場で改善されることもあります。「なるほど」という、ご自身の納得の積み重ねが確かな道標となります。新人ベテラン問わず、レッスンを機会に、基礎の見直しをするのも非常に効果的です。カリキュラムを組んで、基礎全般について、身体の仕組みや筋肉の働きについても詳しく解説していきます。基礎をしっかり体得することにより、例えば現場において、歌や声に関して、ご自身が一番詳しい専門家であることが、最大の自信につながると思います。

元よりボイストレーニングは、習慣が基本です。そして感性を妨げないメソッドを選択することが大切です。発声練習では「声の出し方」について深掘りしていきますが、発声練習の目的は「声の出し方が気にならなくなるため」と最初の時間にお伝えしています。ぜひレッスンの期間も、本番には練習を持ち込まず、これまで通りか、これまで以上の集中力でパフォーマンスして下さい。必ずや成果を上げることでしょう。

思いのままに歌って、聴く人の感動を呼び起こす歌唱表現は、深い基礎の上にあります。

浅見昂生

2025.3.21 声という素晴らしい楽器